『地獄変』は強烈!これは芸術としか思えない。
ちくま文庫から平成28年12月10日に発刊された本。
掲載されている作品は、すべて教科書に出典されている。
「羅生門」は、ふぅん。
初めて羅生門を読んだと思われる中高生だったわたしには、羅生門のよさがわからなかった。*1
なぜ、傑作と言われるのかまったくわからなかった。
そのおかげで、残念ながらまったく覚えていない。
そもそも理解する素地というものが、わたしになかったせいか、
芥川さんの作品は、途中でつまらなくなって読まなくなってしまった記憶しかない。
今回、うん何年という年月を経て、あらためて読んでみた。
残念ながら、羅生門のスゴさを理解するにはまだ早すぎたようだ。
解説で羅生門について熱く語っていた三好行雄先生のようにはどうしても思えないのだ。
それでも、
「では、おれが引剥をしようと恨むまいな。おれもそうしなければ、餓え死する体なのだ。」(p23)
の言わんとすることはわかった。気がする。
「地獄変」は強烈!もったいないことした!
なぜわたしは、この短編小説を知らなかったのだろう!
これまでの読書人生を無駄に過ごしたと後悔。
殿様からの依頼で良秀という高名な絵師が地獄変を描くことになる。
良秀は、描くものは「実際に自分で見たものしか描けない」という。
地獄変を完成させるにあたり、最後の重要なパーツを自力では実際に見ることができない。
そこで殿様にお願いし、叶えてもらうのだが・・・・・・
というのがとても簡単なあらすじ。
第三者からの目線で語られる物語。
大河ドラマのように、朗読から始まり役者が揃い、物語が進み朗読で終わる。
そんな様子が色濃く出ているような気がした。
おそらくこれが、芥川さん独特の文章のリズムというものなのでしょう。
これこそ傑作!
なぜにもっと早く、この話に興味をもたなかったのか。
とても悔やまれる。
「舞踏会」は、鹿鳴館
2番目によかった。
明治時代の社会背景の一部を切り取った話。
最後のオチ(?)は、うまい。
「鼻」は、想像してはいけないことを知りました。
鼻がそんなに長い人、いる??という発想に流れたからか、よさがわからない。
僧侶の鼻を、「一体どういう病気なんだろう」とリアルに考えたら負け。
わたしは負けた。
この作品が夏目さんの目に止まり、文壇に登ったという出世作。
一度読んだだけでは、わたしにはむずかしいのかもしれない。
その他の短編も面白かった。
『藪の中』の男女関係の狡猾さ、生き抜く方便というか。
生臭い息づかいが漂っていた。
やっと100年くらい前の文学のよさがわかり始めた気がする。*2
久しぶりに人間味あふれる美しい日本語を見た。
個人的に、文学というものは、その作家の背景とともに読むのが一番だと思う。
芥川さんがどのような人生を送ったのか、
芥川龍之介 - Wikipedia でさっとおさらいを。
**国立国会図書館ウェブサイトより
また違う作品を読んでみることにする。
100年経っても色褪せない作品は、すでに芸術。アート。
平成29年 1冊目。